がんの免疫療法におけるポイントの一つに自然免疫と獲得免疫のバランスがあります。
がんを強力に攻撃することが可能な獲得免疫を誘導活性化するためには、まずは自然免疫の活性化が必要なのです。マクロファージや樹状細胞、NK細胞などの自然免疫細胞たちが活性化をすることで、それに引き続きヘルパーTリンパ球やキラーTリンパ球、Bリンパ球といった獲得免疫細胞たちが活性化し、がん細胞を強力に攻撃することが可能となります。

横浜サトウクリニックの免疫監視療法とハイパーサーミア は、この自然免疫と獲得免疫の活性化を引き起こすことで、患者さんのがんと闘う力を高めてきました。

オゾン療法を導入

今回、免疫の活性化を担うもう一つの治療としてオゾン療法を導入することになりました。
オゾンの特徴として強力な酸化力がありますが、このオゾンが直接がん細胞を破壊するわけではありません。

当院で行うオゾン療法は、オゾン大量自家血液療法(MAH:Major AutoHemotherapy)というもので、専用の点滴ボトルに採血した血液(50~100ml)に医療用酸素を電気分解して得られたオゾン酸素混合ガス(10~40μg/ml)50~100mlを混合した後に点滴投与するものです。
(ボトル内のオゾンガスは血液に触れることですぐに分解され酸素に戻ります。
したがってオゾンそのものが血液中に残留することはありません。)

オゾンによって血液に誘起される一過性の酸化ストレスは熱ストレスや寒冷ストレス、一過性の虚血、その他化学的刺激や運動などの穏やかなストレスと同様に、細胞の修復力、防御能力の増強をもたらします。
オゾン療法は、穏やかな炎症を誘導することで免疫細胞の機能を刺激した後に炎症と抗炎症のバランスを調整するのです。
採血した血液のオゾン化により過酸化水素(H2O2)が作用することで白血球、血小板が活性化するとインターフェロンやインターロイキン等のサイトカイン産生が高まります。
オゾン化血液を患者に戻した際には、H2O2で活性化された赤血球、白血球、血小板に加え脂質酸化物が全身を循環することで抗炎症作用、抗酸化作用、免疫系の活性化、血液循環の改善が起こります。
免疫監視療法やハイパーサーミア と同様に末梢血白血球のがん免疫を高めるインターロイキン12やインターフェロンγ等の産生能が高まることも確認されています。
*オゾンと酸化ストレス、免疫反応の詳細はこちら ページ内→

治療スケジュール

当院で行うオゾン大量自家血液療法(MAH)は2週間毎に繰り返します。

オゾン療法の禁忌

  1. グルコース6リン酸脱水素酵素(G6PD)欠損症*
  2. コントロール不良な甲状腺機能亢進症
  3. 妊婦(初期3ヶ月)
  4. 出血中、出血傾向、生理の重い婦人
  5. 急性心筋梗塞、脳梗塞急性期
  6. 心不全
*溶血性貧血を引き起こしてしまう可能性があります。
初回治療前に採血によるG6PD検査で確認をします。

オゾン療法の副作用

重篤な副作用は認めませんが、稀に倦怠感やクエン酸ナトリウム(血液抗凝固剤)によるシビレを感じることがあります。

オゾン療法で使用されているオゾン発生器と専用点滴ボトルについて

未承認医薬品等

この治療で使用されるオゾン発生器と専用点滴ボトルは医薬品医療機器等法上の承認を得ていない未承認医療機器です。

入手経路等

当院で使用しているオゾン発生器及び専用点滴ボトルはドイツ、ヘンスラー社製で、ヨーロッパで医療用機器としての許可を受けた製品をオゾノサン・ジャパン社を介して輸入しています。

国内の承認医薬品等の有無

国内において承認されている医療機器はありません。

諸外国における安全性等に係る情報

オゾン療法(MAH)の安全性

● 1.Renate Viebahn博士(ドイツ ヘンスラー社)
査読付きの国際的科学雑誌30件を選別
患者総数585名、対象分346名で計11,207回のMAH
– 注意を要する事例2例のみで有害事象なし
● 2.Dr.Zacob(インスブルックForensic Institute大学)
・オゾン療法医師 644人
・患者数:384,775人
・治療回数:5,579,232回
・有害反応(副作用)率:0.0007%(軽い刺激、すばやく消滅)

主なEBM

● EUROCOOP(European Cooperation of Medical Ozone Societies)
・Oxford EBMセンターの分類基準に準じ、オゾン療法(自家血液オゾン療法(MAH):577名11,200回以上と注腸オゾン療法(RI):716名46,900回以上)のエビデンスレベルがⅠb+Ⅱaであった 1)
● ISCO3(International Scientific Committee of Ozone Therapy)
・Oxford EBMセンターの分類基準に準じ、オゾン療法に関するマドリッド宣言(第2版)として2015年6月にlevel A からCのエビデンスに応じたガイドラインを出版。

1) Renate Viebahn-Hänsler, Olga Sonia León Fernández & Ziad Fahmy, (2016), Ozone in Medicine: Clinical Evaluation and Evidence Classification of the Systemic Ozone Applications, Major Autohemotherapy and Rectal Insufflation, According to the Requirements for Evidence-Based Medicine, Ozone Science & Engineering, 38 (5), 322-345(2016).

オゾン療法の効果のまとめ

  1. 赤血球の酸素運搬能の向上、変形能の向上
  2. 血管拡張作用による血行促進、血球凝集阻止作用
  3. 血管内皮細胞の強化
  4. 血小板凝集阻害作用による血栓形成抑制
  5. 免疫担当細胞活性化調節作用
  6. 抗酸化作用
  7. 消炎鎮痛作用
  8. 創傷治癒促進
  9. 抗アレルギー作用

オゾンと酸化ストレス、免疫反応

酸化ストレスによって誘起される細胞の様々な反応が解明されてきています。
オゾンと血液の反応で生成される過酸化水素(H2O2)や脂質酸化物の一種4ヒドロキシノネナールなどによって細胞核の内部に作用して遺伝子を調整することで様々なタンパク合成をコントロールしている核内転写因子が作動することも解明されています。
例えば免疫系の活性化や炎症応答に関わるNFκB(エヌエフ・カッパー・ ビー、核内因子κB、nuclear factor-kappa B)
や抗酸化系の活性化や炎症抑制、細胞保護に関わるNrf2(エヌアールエフツー、 NF-E2-related factor-2、Nuclear factor-erythroid 2-related factor 2)
、熱ショックタンパク(HSP)の誘導や細胞保護に関わるHSF(エイチエスエフ、ヒートショックファクター、Heat shock factor)等はオゾン療法にも関連して広く研究されてきました。
NFκBはIL-1β、IL-6、Il-8、TNF-α等の急性炎症に関わるサイトカイン産生を促進し、Nrf2は反対にIL-1β、IL-6等のサイトカイン産生を抑制しているのです。
ハイパーサーミア のページでも触れましたが、温度ストレスだけでは無く、酸化ストレスによって活性化されるHSFによって誘導されるHSP(ヒートショックプロテイン)によってIL12やINF-γ等のサイトカイン産生が促進されます。

*ハイパーサーミア ページへ→


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