会報2号 1998年7月発行 
第一回清水市講演会記事抜粋(竹内先生・佐藤先生)

公開医学講話「がんと免疫治療」の紹介
主催は佐藤免疫療法友の会「一英会」

一英会では、今年から全国各地で会員の皆様を中心に免疫療法に関心とご理解を お寄せいただく方々のご参加による公開医学講話を企画しております、 その第一回目が去る4月25日(土)午後13時30分から清水市市民文化会館中ホールにおいて開催れました。
当日は、朝方から降ったり止んだりのあいにくの小雨模様でちょっと蒸し暑い天候でしたが、 清水地区の会員を始め、各地から450名もご参加があり、盛大に公開医学講話を開催することができました。

第一部講演
「これからのがん治療法について」
講師 竹内 正七 先生

今日は一英会の公開医学講話にお招きいただき、皆様にお話するチャンスを得ましたことを大変に光栄に存じる次第です

●これからのがん治療法

今日のテーマは「これからのがん治療法について」とういうことですが、これからのがん治療を考えるには、 現在のがん治療を理解しなければなりません。 現在、がん治療法としては「手術療法」「放射線療法」「化学療法」の三つの療法の他に、日陰の存在ではありますが、 かなり古くから、免疫療法という人類にとって注目するべき治療法があるのです。 手術療法も放射線療法も、化学療法も、これらの療法には必ず何等かの副作用があり、決して楽な治療法ではないのです。 ところが免疫療法は、がんだけを選び出して治療する方法ですから、三つの治療に比べて副作用は遥かに少ないし、大変 楽な治療法であり、最近は免疫療法に対する期待が非常に高まってます。

「佐藤一英博士が若い時から免疫療法の研究に情熱を燃やした所以もここにあるように推測するんですが 本当に免疫によって治ったかどうか、本当に効くんだということを確認する方法、その証拠がないのもですから 免疫療法は、その地位をなかなか確保できなかったのです。」 いまだに、最近の免疫学をよく知らないで、昔の知識だけで「あんなものは効かないよ」「あんなものに騙されるなよ」 と言われるお医者さんも少なくないようです。 ところが、今では免疫療法は大変な進歩をしており、学会では勿論、学問的な裏付けもかなりしっかりしており、 臨床的にも治療効果としても注目を集めだしているのです。

これまでの三つの治療法もそれなりによいところがあり、これらの治療法を捨てることではなく、それを正しく必要な ときに行うことです。しかし、その背景には免疫療法というもうを絶えず考えて、治療に当たることがこれからのがん の治療法の在り方だと思います。

第二部講演
「免疫監視療法について」
講師 佐藤 忍先生


ご紹介いただきました佐藤でございます。
私後になりますが、実は佐藤家にとって静岡地方というのは、特別の思い入れがございます。 昭和55年ごろだと思ういますが、亡くなりました私の父、佐藤一英が今日と同じ様にこの地区で、 免疫監視療法に関する講演を行っておりますが、その当時は今ほど免疫についての関心も高まっておりませんので、 いろいろ苦労も多かったことだろうと感慨深いものがございます。

早速ですが、今日は、免疫監視療法とはどのような治療法なのか、その歴史・免疫監視療法の作用機序・その治療成績と 症例・免疫監視療法の今後などについて、お話しをしてみたいと思います。

●免疫監視療法とは

免疫監視療法というのは、がん患者の免疫監視構造の機能低下の状態も着目して体の外から免疫刺激を加えて、 免疫の監視機構を活性化する治療法でありますが、免疫細胞というと、さっきから沢山ありますが、結局は見張り 番役をしてくれて、自己と非自己、つまり敵か味方かの判断をして味方以外は排除する反応を起こす細胞です。

外から入って来る敵を攻撃するのもそうですが、がん細胞のように、もともと自分の身体の中から生まれる細胞 であっても、性格も形も違いますから、これを敵と看做して、やっつけようとする反応を起こすのです。 そういう働きを免疫の監視機構といいます。

免疫細胞はどうやって敵と味方の区別をするのだろうか、このスライドはかなり大胆な絵なのですが、 正常な細胞は、皆それぞれ特有の出っ張りを持っていて、ここにお集まりの500名の皆様一人一人の細胞が 皆違った出っ張りの形を持っているのです。 このスライドのこの細胞はAさんの正常細胞だとすると、Aさんの臓器のどの細胞を採っても同じ出っ張りの形をしていて、 アンテナのようなものでその出っ張りを確認しているのです。 自分と同じ出っ張りであれば、静かに喧嘩はしませんが、出っ張りの形が変わっていれば、自分とは違いますから敵だと 認識して、これを攻撃するのです。腫瘍の類は、遺伝子に異常が起こり蛋白の合成が変わると細胞の出っ張りの形も変わりますから、 これは敵だと見做していろいろな細胞が、それぞれの役割を果たそうとするのです。

皆さん健康だと思っている人でも、がん細胞は日に何千個も生まれていることを聞いたことがあると思います。 なぜ、がんにならないのでしょうか、それは免疫の監視機構がちゃんと働いて敵を見付け、それに反応を起こす兵隊が動員され、 これを潰してくれているからです。 免疫の治療で、あばれようとするがん細胞と戦ってこれをやっつけるためには、免疫監視機構を健康な状態の人と同じ ように働くようにしてあげればよいのです。 免疫監視療法は免疫監視機構の機能が落ちてる患者さんに免疫刺激を加えて、免疫監視機構の活性化をしてあげる治療法なのです。

以下会報2号参照