「散歩の効能」佐藤碩男さん(清瀬市在住)

2013.9.2 
「散歩の効能」佐藤碩男さん(清瀬市在住)

明け方に散歩に出た。
昨晩、かみさんは病気で落胆する私に、
「生きているだけでいいのよ」
と言った。その意味を考えながら畑中を歩いていた。
すると突如、東の空が赤く燃えて、中天がコバルトブルーに、西の空がネイビーブルーに変わった。これが陽炎(かげろう)というのだろうか。
あまりに幻想的な光景に体が震えたが、心の方は何か満たされて平らかになっていく。そんな陽炎に遭遇し、
「何もできなくても、生きているだけでいい」
という意味が分かるような気がした。
「病気から抜け出したい」
そんな一心でただ歩いていた散歩も、この瞬間から楽しみに変わった。
季節を感じながら歩く、そういう歩き方ができるようになった。
私が一番好きなコースは「けやきの道」である。
私はあらゆる木の中でけやきが一番風格があると思っている。天をも見せず威風堂々と葉を繁らせた夏のけやきもいいが、すっかり葉を落とした冬のけやきはさらにいい。二抱もありそうな巨木からは想像もできない繊細な枝を天空に幾重にもはっていて、冬の透明な風と会話する。ここのけやきはそもそも屋敷林だったもので、道幅を広げたため歩道の並木に組み込まれた。そのために道はけやきの古木を縫うように細くつけられ、それが素敵なのである。
この道を歩くと「病気なんかにへこたれるな、堂々と生きろ」と、けやきに励まされる気がする。
やっと出会ったサトウクリニックの免疫監視療法のおかげで、現在は健常者に戻ることができた。
この間の闘病生活で、つくづく思ったことが「病気は自分で治す」ということだった。
そして散歩は、食生活と共にそのためのかけがえのない薬である、散歩の効能は肉体だけでなく、精神の健康にあるようだ。


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